院長のひとりごと。

木曜日, 5月 10, 2007

医療機器の嘘を暴け!

医療機器には嘘が多い。以前ブログ内で軽く触れたが(このブログではなかったかもしれないが)、その価格が嘘である。

今、手元に医療系雑誌があるが、その中から一部御紹介しよう。

”ワイドペーパーで記録するコンパクトな心電計”。定価241万5000円。
”心筋壁運動を評価する超音波診断装置”。定価7000万円。
”X線透視撮影機能と一般X線撮影機能を同時に兼ね備えたX線透視撮影装置”。定価1億円。

このような嘘を平気でどの雑誌にも掲載している。

これらは何が問題で、どういう嘘なのかをお示ししていく。

まず、一番上の心電計。心臓のダメージや不整脈を見つける心電図をとる機械だ。
一般の診療所などにも広く普及しており、当院にも採用されている比較的ポピュラーな機械だ。

以前に投稿したように、医療費、つまり診療の価格は国が決めている。
この検査なら何円、この処置ならいくらといった具合だ。

国が定めた心電図の検査は、基本的な検査で150点、つまり1500円である。
この計算だと心電計を購入すると241万5000円÷1500円=1610回(人)検査すればやっと基が取れるということになる。
普通は心電図は何回も行う検査ではなく、当院でも去年1年間で250件程度であった。
そうすると1610回÷250件=6.44年続けてようやく基が取れる計算になる。
確かに、これはそれほど難しくはないノルマだが、しかしそこに嘘はある。
実際の心電計の販売価格は30万~50万程度が相場である。
つまり定価の1割から2割が実際の販売価格なのだ。
こんな商売がどこの世界にあるのだろうか?
そんな商売人がいたら、大赤字覚悟の大バカ商売人か、よっぽど奉仕の精神をお持ちの聖人君子かのどちらかだ。
つまり実質の生産コストもおそらく高く見積もって10万~30万弱なのだろう。実際はそれ以下かも。

しかも見積書や請求書には、”定価○○円。割引9割。販売価格××円”と当たり前のように書き込んでくるのである。
はっきり言うと詐欺に近い。
相手によって値段を変えているのが現状なのだ。つまり値切らなければ何ぼでも高く売ろうとしてくるのだ。
実際、当院の心電計はここだけの話(と言っても公開されているが)、30万弱であったがそれも値切られているのか怪しい。

上記の超音波装置(別名エコー。内臓の動きや状態を確認するのに使われる。)も実勢価格は500万~1000万くらい。
X線透視装置も1000万前後が実勢価格だろう。

すべての医療機器は同様であり、たぶん普通の医療人は違和感を覚えないだろう。

しかしこれが医療費高騰の原因となっていると唱える人も少なくない。
医療業界は今まで確かに甘い汁を吸いすぎた。その付けが回ってきていると言われてもやむを得ないだろう。
しかし現状の医療費削減は、過剰な労働を強いられている医師や看護師の人件費削減のみを行っているようにしか思えない。
最近になって医師の過剰労働がテレビなどで取り上げられているが、実際に私が大学病院に勤務していたときは、楽なときで週60時間弱、平均すると週70時間以上働いて、当直も月に5回以上あり、当直明けの日(当直翌日)も普段どおり10時間以上働くことが当たり前だった。
しかも大学では研究生(大学に残って勝手に勉強している人)という扱いのため、それだけ働いても1銭もお金が出ないのだ。
そのため大学勤務医のほとんどは、外勤(大学以外のほかの病院でアルバイトすること)で生計を立てている。
このようにつらい思いをしている人の給料カットを医療費削減の中心に据えるのはおかしい。
医療機器販売などのコストカットをしていくのが、正しいやり方なのではと思う今日この頃だ。

1 Comments:

  • こんにちわ

    検査機器の価格すごいですね。

    パソコンも リーズナブルになって来ているのに

    レントゲン ぐらい 安くなればいいですね。

    By Blogger Unknown, at 13:09  

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